プランナーズレポート 柳下大  3/17 updated

 

この度はOMOへのご参加ありがとうございました。つづいてエリートクラスのルート解説です。

 (これらの地図を用いて後日入山しないでください。大会当日のみ使用許可を取っています。また地図転載を禁止します)

 

 ■エリート

ここ2年は概ね標高400m以下の奥武蔵でも里に近いエリアでコースを組んでいましたが、今回エリートクラスはマウンテンOらしく奥武蔵の背骨に踏み込んだエリアも含めたいという考えで下見を実施しました。結果、龍ヶ谷川流域に地形・植生とも良好な場所があり、序盤と終盤の里山エリアを併せて変化のあるコースに仕上げることができました。標高差が大きくなるため個々のCP位置はタフにならないように配慮しましたが、それでも1500mオーバーなので例年より体力的負荷は大きかったと思います。

ルート:

赤:谷川 3:27:25

緑:小泉 3:35:32

青:稲毛・寺垣内 3:53:13

 

 

 

 

S-1

どこで尾根とりつくか選択肢が分かれますが、上位チームはいずれも一番手前で山にとりつく最短ルートでした。ちなみに最も車道を長く引っ張る紫ルートだと距離が900m伸び、比高は50m減ります。ロード900m4分、登り50m3分として差し引きプラス1分程度と想定されますが、その分アタックは易しいので選択肢としては十分考えられます。

 

1-2

小道で主尾根に上がって下りアタックと、谷を横切るルートの2択になります。前者が無難で実際区間2,3位のラップを取っています。(小泉10:45 / 稲毛・寺垣内10:56)

しかしトップラップは後者です。(谷川 9:39)

注目したいのはそのルートで、まず谷の分岐点を通過し、その後枝沢をつめています。尾根を越えて高さを維持すれば中腹の小道にぶつかるという見事なラインです。もちろんこれを瞬時に判読して実践できるのは高いナビゲーションスキルが必要になります。

 

2-3-4

2-3は尾根の乗り換えのある下りですが、このような課題は完走レベルだとほとんど無難にこなしています。また、3-4は渡渉して広場に出ることができます。なお、4の時点で完走チームは全て1時間以内です。

補足:渡渉は今回のエリートクラスのように対岸が立入り可ならOKですが、民家や畑の場合は絶対にやめてください

 

4-5

ルート選択が多彩なレッグで、ルートが分かれました。緑(小泉)22:17、赤(谷川)24:18で、距離、比高は同等でも急登を避ける緑ルートのほうが早いという結果でした。ちなみに試走ではオレンジルートを選び、手前の分岐をスルーしてマップギリギリまで行ってしまったものの、23分半程度で両者の間に入ります。全く別ルートなのにこのような僅差の結果になるのもオリエンテーリングのルートチョイスの面白いところだと思います。

 

5-6

尾根に出る際に低めに流されると東側の支尾根と勘違いする恐れもありますが、ここも完走チームには目立った遅れはありません。

 

6-7

とにかく登る体力区間で、谷ルートと尾根ルートの二択です。比高、距離ともほぼ変わらない設定だったのですが、谷ルート(小泉32:06 / 稲毛・寺垣内34:30)、尾根ルート(谷川36:31)と、大きな差ができました(尾根ルートはオレンジで関八州見晴台をショートカットすると若干速いと思います)。

ここも4-5同様、比高や距離では同じでも急登やトレイルを含むと時間がかかるという傾向が出たようです。谷ルートは下りがガレていて、身のこなしのスキルも必要で誰もが速いとは限りませんが、ルート選択の参考になるでしょう。

 

 

7-8-9-10

ダウンヒル基調のスピード区間。8,9ともトラバース気味に脱出して尾根に復帰することができます。9-10はルートが分かれ紫ルートも完走者の選択肢でした。その中で小泉・谷川の2トップが抜けたタイム。小泉(8-9 13:03 / 9-10 26:29) 谷川(8-9 13:59 / 9-10 26:45)

ルートの美しさにぜひ着目してください。ナビゲーションを極めるとこんなルートも取れます!

 

10-11-12-13-14-15-F

終盤は一転して里山エリアのテクニカルな設定で、時間内完走への関門としました。実際にこのエリアで大きくミスして完走を逃したチームもあり、特に14-15は上位3組こそロスなくこなしていますが、緩斜面を斜めに下る難しい区間でした。谷川選手が終盤切れ味を見せ、逆転優勝を果たしました。

 

10/23(ソロ・チーム)の完走でした。優勝設定タイムが少し伸びましたが、完走率は昨年並みをキープしました。ソロを除いて初の4時間切り、女性初の4時間切りが今年のトピックです。エリートクラスは今後も競技範囲を変えつつ、チャレンジングなコースを提供していきたいと考えています。共にレベルアップしていきましょう。

 

 

 

■阿闍梨CUP・レギュラー

過去2回越生での開催と範囲は重なる部分も多いですが、昨年のビギナークラスを新設に伴い、当時よりコースの難易度は上がっています。特に2-3、6-7は斜面を横切る必要のあるレッグで、地形を読みつつ高さや方向を維持するスキルが必要になります。ただし斜面を横切った先で道に乗れるため、CPの位置自体はエリートクラスより易しい設定としています。また、累計比高もエリートの半分以下に抑えるなど、コースの特性に差をつけています。

 

ルート(オレンジ):田濃 2:30:58

1-2

道でひっぱり直登するルート(緑)もあります。距離は伸びますがアタックは易しいです。

試走ではこのルートで20:40でした。

 

4-5

ピークにあがらずトラバースでアタック(青ルート)できると若干速いと思います。緑ルートは距離が+300m程度なので、ピークまで上がった場合の比高との差し引きでタイムは同等と思われます。

 

7-8

尾根ルート(青)のほうが距離は短いですが、尾根までがオフトレイルであり尾根上に2つピークあるため多少余計に時間がかかると思います。なお試走では田濃選手と同じルートを走り14:10のベストラップ相当でした。

 

ラップ解析をみると中盤まで無難にこなしつつも終盤の9,10,11などで大きくロスしているケースが目立ちます。終盤のエリアは緩急のある地形でリロケートが難しいということに起因しているのだと思います。

 

 

特に11は難しいですが、傾斜の違いが手掛かりになります。図の青が緩斜面、赤が急斜面です。小道を下ってきて北側の緩斜面を見て道を離れる手がかりになりますが、南の谷を横切った先が緩斜面(青)なら位置が高くCPのある谷をスルーしてしまいます。いっぽう急斜面(赤)ならCPのある谷を捉えることができます。

 

レギュラーの完走率は半分程度でラップ解析ではミス率10%以下は優勝の田濃選手のみでした。阿闍梨CUPも全般的にミス率高く苦戦した印象です。迷いつつも楽しめたという感想もあれば、難しすぎたという感想もありました。

 

普段トレイルランニングをやっていて、トレイルを数十キロ走ることに慣れている方もいらっしゃるでしょうが、少しトレイルを離れるだけでたった十数キロでもまた違った難しさや面白さがあるということを感じていただければと思います。

 

 

■ビギナー

道主体で道上にビギナー専用に設定したCPと、道から遠くない場所の他クラスと共通CPでコースを構成しました。

 

1.道をしっかりたどる

2.道上で現在位置を把握する(=道から離れたCPへのアタックする位置となる)

 

という2ステップの課題を盛り込んでいます。1と2、どこまで自身ができたのかぜひ振り返ってみてください。2ができるようになるには、山の中ですからやはり地形を読み取るということが必要になってきます。例えば3であれば鞍部から登りに移る地点、5であれば下ってきて平坦になる地点ということになります。アタックポイントから素早くCPにたどり着くにはまた次のステップなので、最初はそこに時間がかかっても構いません。まずは道上で現在位置が把握できるようになることが大切です。

 

ルートはコースディレクターの想定したルート例になります。